股関節が曲がりにくい・付け根がつまる方へ|しゃがむ・靴下・爪切りがつらいときの、股関節の後ろをゆるめて動かすセルフケア

股関節を曲げると骨の頭は後ろへすべる。後ろが硬いと前へ押し出され、付け根の前でつまる模式図

こんにちは、GENRYUです(^^)

この記事の要点

  • 股関節を曲げたときに「前(付け根)がつまる」方は、前ではなく後ろ側(お尻の筋肉や関節を包む袋)の硬さが関わっていることがあります。
  • 後ろが硬いと、太ももの骨の頭が前に押し出され、付け根の前でつまりやすくなる、というのが当院の考え方です。
  • 膝を胸に近づける・しゃがむ・靴下をはく動きを先に確かめ、後ろをゆるめて、動かして、もう一度確かめます。

先に整形外科を受診してほしいとき

  • 転んだ・ぶつけたあとから脚に体重をかけられない、脚の付け根が強く痛む
  • じっとしていても、夜寝ているときも付け根が痛む
  • 発熱がある、付け根が腫れて熱をもっている
  • 痛みがどんどん強くなる、歩く距離が急に短くなった
  • 子どもの頃に股関節の病気を指摘されたことがある、または「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」と言われたことがある(画像で確かめておくと安心です)

「膝を胸に近づけると、脚の付け根がつまる」「しゃがむのがつらい」「靴下をはくのも一苦労」。
こんな股関節の悩み、ありませんか?

マイベストプロで2回に分けて書いた「股関節の屈曲制限」の記事を、ホームページ版として1本にまとめ直しました。図を加え、文献を確かめ直し、ご自宅で試す順番が分かるように並べ直しています。

目次

股関節はどこまで​曲がる?

股関節を曲げる動き(屈曲:くっきょく)は、膝を胸に近づける動きです。
日本の学会がまとめた関節の動きの目安では、股関節の屈曲は125度とされています(膝を曲げた状態で測ります)[1]。

(この125度は「参考の値」です。年齢や体格で差があり、これより小さいから異常、という意味ではありません。)

しゃがむ、靴下をはく、足の爪を切る、低いいすから立ち上がる。
こうした動きは、いすに座るよりも深く股関節を曲げる必要があります。だからこそ、曲がりにくさが一番出やすい場面です。

「前がつまる」のに、​なぜ​「後ろ」?

股関節は、太ももの骨の丸い頭(大腿骨頭:だいたいこっとう)が、骨盤のくぼみ(寛骨臼:かんこつきゅう)にはまり込んだ関節です。
股関節を曲げるとき、骨の頭はくぼみの中でクルッと回りながら、少し後ろ側へすべるように動きます。

股関節を曲げると骨の頭は後ろへすべる。後ろが硬いと前へ押し出され、付け根の前でつまる模式図

ところが、股関節の後ろ側

  • お尻の大きな筋肉(大殿筋:だいでんきん)
  • お尻の奥の筋肉(梨状筋:りじょうきん など、深層外旋筋)
  • 関節を包む袋の後ろ側(後方関節包:こうほうかんせつほう)

が硬いと、骨の頭が後ろへすべれず、前へ押し出されるような動きになりやすいと考えられています。
その結果、付け根の前で骨どうしや組織がぶつかり、「つまる」感じが出やすくなるのです。

この考え方は、ブログ①で紹介した肩(後ろが硬いと前で詰まる)とよく似ています。

ただし、股関節の後ろ側の硬さが、どのくらいの割合でつまりの原因になっているかは、まだはっきり分かっていません。
付け根のつまりには、骨の形(寛骨臼形成不全や、骨の出っぱり)、変形性股関節症、腰からの影響なども関わります。セルフケアの前後で確かめて、「あなたの場合はどうか」を見ていきましょう。

股関節と​腰は、​つながっている

股関節が曲がりにくいと、その分を腰(背骨)が丸まって補います。

日本の小さな研究では、座ると腰痛が強くなる人は、腰痛のない人や立つと腰痛が強くなる人に比べて、股関節の曲がる角度や、脚をまっすぐ上げる角度(SLR)が小さかったと報告されています[2]。
(対象は20〜30代の病院職員41人です。「股関節が硬いから腰痛になった」と原因まで言えるものではなく、「一緒に見られた」という関連の報告です。)

前かがみで腰がつらい方は、ブログ③の「股関節から曲げる練習」もあわせて試してみてください。

脳と​神経から​見た​「曲がりにくさ」

関節の動きは、筋肉や関節包の硬さだけで決まるわけではありません。

股関節の深い位置まで曲げる機会が減ると、脳の中の「股関節をどう動かすか」の地図がぼやけていきます。
地図がぼやけた動きを、脳は「よく分からない=少し危ない」と判断しやすく、筋肉を固めてブレーキをかけることがあります。

だからこそ、

  • 痛気持ちいい範囲で、ゆっくり
  • 呼吸を止めずに
  • 「動けた」をくり返して、脳の地図をはっきりさせていく

ことが大切です。
(当院が学んでいる、脳科学をもとにしたトレーニング法「Z-Health」の考え方です。)

始める​前に:3つのことを​確かめる

  1. 膝を胸に近づける:仰向けに寝て、片方の膝を両手で胸に近づけます。どこまで近づくか、つまる場所はどこか(付け根の前/お尻の後ろ/外側)、痛みの強さ(0〜10)を覚えておきます
  2. しゃがむ:足を腰幅に開き、かかとをつけたまま、ゆっくりしゃがみます。どこまでしゃがめるか、どこがつまるかを覚えておきます
  3. 靴下の動き:いすに座り、片方の足首を反対の膝にのせて(あぐらのように)、上体を前に倒します。どこまで倒せるか、どこが張るかを覚えておきます

左右で比べると、違いが分かりやすくなります。

始める前に確かめる3つ:膝を胸に近づける、しゃがむ、靴下の動き

セルフケア:後ろをゆるめる​ → 動かす

どれも痛気持ちいい程度までが基本です。付け根に鋭い痛みが出る場合は、すぐに弱めるか中止してください。
1つ行ったら、上の3つのどれかで確かめ直しましょう。

ゆるめる

1. お尻をボールでゆるめる

  1. 床に座り、片方のお尻の下にテニスボール(硬すぎる場合は柔らかいボール)を置きます
  2. 手を後ろについて、ゆっくり体重をあずけます
  3. 痛気持ちいい場所で30〜60秒。呼吸は止めずに、吐く息で力を抜きます
  4. 余裕があれば、膝をゆっくり内・外に倒して、ボールの当たる場所を少しずらします

    ※脚にしびれが走る場合は、場所をずらすか中止します(お尻の奥には坐骨神経が通っています)

2. お尻のストレッチ(いすで行う「4の字」)

  1. いすに浅く座り、のばしたい側の足首を反対の膝にのせます(足で「4」の字をつくる形)
  2. 背すじを伸ばしたまま、おへそを前に出すように、上体を股関節から前へ倒します
  3. お尻の奥が伸びるところで20〜30秒、2〜3回

    ※背中を丸めると、お尻ではなく腰が伸びてしまいます。胸を張ったまま倒しましょう

    ※膝や付け根が痛む場合は、のせる足を膝より手前(すね)にずらします

3. 膝を反対の肩へ(股関節の後ろの袋をのばす)

  1. 仰向けに寝て、のばしたい側の膝を両手で抱えます
  2. 膝を胸に近づけたあと、反対側の肩の方向へ、ゆっくり斜めに引き寄せます
  3. お尻の後ろから外側が伸びるところで20〜30秒、2〜3回

    ※付け根の前がつまる場合は、膝を少し外側へずらすと楽になることがあります。つまりが強い方は無理に続けません

動かす

4. 四つ這いで、お尻をかかとへ(ロックバック)

  1. 四つ這いになり、手は肩の真下、膝は股関節の真下に置きます
  2. 背中を丸めず、腰の自然なカーブを保ったまま、お尻をゆっくりかかとの方へ引きます
  3. 腰が丸まり始める手前で止め、ゆっくり戻ります
  4. 10回

    ※膝の幅を少し広げると、付け根の前のつまりが減ることがあります。つまりにくい幅を探してみてください

    ※この運動は、体重を手で支えながら、深く曲げる動きを安全に練習できます

5. 付け根に「手刀」を当てて、折りたたむ

  1. いすに浅く座り、両手を「手刀(てがたな)」の形にして、脚の付け根(ももの付け根のしわ)に当てます
  2. 背すじを伸ばしたまま、手刀を付け根に挟み込むように、上体を前へ倒します
  3. 「付け根が後ろへ折りたたまれる」感じを感じながら、ゆっくり5〜10回

    ※手刀で付け根を軽く後ろへ押すイメージをもつと、骨の頭が後ろへすべる動きを助けやすくなります(強く押す必要はありません)

6. 股関節で、ゆっくり大きな円を描く

  1. 壁や机に手をついて、片脚で立ちます(不安な方は、仰向けや四つ這いで行います)
  2. 反対の膝を前に持ち上げ、そこから膝を外へ開き、後ろへ回し、元に戻す、というように、股関節だけでゆっくり大きな円を描きます
  3. 骨盤や腰がいっしょに動かないように、できる範囲の円で、各方向3〜5回

    ※つまる・痛む位置の手前で円を小さくします。「なめらかに回せる範囲」を少しずつ広げていくイメージです

    ※脳の中の「股関節の地図」をはっきりさせる運動です

終わったら、​もう​一度確かめる

最初と同じ3つ(膝を胸に近づける、しゃがむ、靴下の動き)を確かめてみてください。

結果は「楽になった」「同じ」「悪くなった」「分からない」のどれかで残しておきましょう。

  • ゆるめたあとに楽になる → 股関節の後ろ側の硬さが関わっていそう
  • 動かしたあとに楽になる → 動かし方や、脳の「ブレーキ」が関わっていそう
  • どちらも変わらない/付け根の前の鋭い痛みが続く → 骨の形や関節そのもの、腰など、ほかの原因の可能性。医療機関や当院にご相談ください
確かめる、ゆるめる・動かす、確かめ直すの流れと、結果からの見当のつけ方

どのくらい​続ければいい?

まずは1日1回、前後の確認で変化が大きかったものを中心に、2〜4週間続けてみてください。
「ゆるめる」は短く、「動かす」を毎日続けるのがコツです。
変化がない、または悪くなる場合は、無理に続けずご相談ください。

よくある​質問

Q.付け根の前がつまるので、前を伸ばしたほうがいい?
付け根の前がつまるときは、前を伸ばすより、まず後ろ(お尻・股関節の後ろ)をゆるめてみてください。前を強く伸ばすと、かえってつまりが強くなることがあります。

Q.どれから始めればいい?
まず3つのチェックで、どこがつまるかを確かめてから。迷ったら、2(いすで行う4の字)と4(ロックバック)がおすすめです。安全に行いやすく、前後で比べやすいからです。

Q.ポキッと音がしますが、大丈夫?
痛みがなければ、多くは心配のない音です。音と一緒に痛みや引っかかり、脚の力が抜ける感じがある場合は、医療機関にご相談ください。

まとめ

  • 股関節の屈曲の目安は125度(日本の参考値)。しゃがむ・靴下・爪切りは深く曲げる動き
  • 「前がつまる」ときは、「後ろ」の硬さが関わっていることがある
  • 股関節が曲がりにくいと、腰が丸まって補う
  • ゆるめる → 動かす → もう一度確かめる。脳の「股関節の地図」をはっきりさせる

当院では、股関節の曲げ伸ばしやしゃがむ動きを一緒に確かめ、股関節の後ろ・前・骨盤・腰のどこが関わっているかの見当をつけてから施術します(検査 → 施術 → 再検査)。
→ 股関節の痛みについて詳しくはこちら
→ GENRYUメソッドについて
→ ご予約はLINE・お電話(080-7982-0022)で

それではまた、次回のブログでお会いしましょう(*^^*)

参考文献

  1. 日本整形外科学会, 日本リハビリテーション医学会, 日本足の外科学会. 関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂). Jpn J Rehabil Med. 2021;58:1188-1200/日整会誌. 2022;96:75-86. 表(日本リハビリテーション医学会)
  2. 中野淳一, 渡會由恵, 光山孝. 腰痛を悪化させる姿勢と股関節可動域の関係. 理学療法学 Supplement. 2008;35(Suppl 2). 第43回日本理学療法学術大会. doi:10.14900/cjpt.2007.0.C0611.0
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この記事を書いた人

理学療法士。病院・整形外科クリニックで9年間リハビリに携わったのち、2016年に大分市金池町で「綜合整体 GENRYU」を開業。脳科学を基にしたトレーニング法「Z-Health」で痛みの神経科学・運動学習を学び、研究にもとづく検査と施術、セルフケアの指導を行っている。

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