こんにちは、GENRYUです(^^)
この記事の要点
- 膝の内側の痛みは、半月板や軟骨だけでなく、皮膚の感覚を受け持つ「伏在神経」が関わっていることがあります。
- 伏在神経は、太ももの内側で筋肉のあいだや筋肉の中を通ります。この通り道がこすれたり圧迫されたりすると、ピリピリした痛みや触れたときの嫌な感じが出やすくなります。
- 押して痛む場所・感覚の左右差・動いたときの痛みを先に確かめ、セルフケアのあとにもう一度確かめます。
先に整形外科を受診してほしいとき
- ひねった・ぶつけたなどのあとから、膝が腫れて熱をもっている
- 膝が急に伸びない・曲がらない(引っかかって動かない)、体重をかけられない
- 太ももや膝に力が入らない、膝がガクッと抜ける
- しびれや感覚の鈍さが広がる・強くなっている、腰の痛みと一緒に脚がしびれる
- ふくらはぎが腫れて痛む、発熱がある
「歩き始めに膝の内側がズキッとする」「膝の内側からすねにかけてピリピリする」「軽く触れただけで嫌な感じがする」。
こんな膝の悩み、ありませんか?
マイベストプロで2回に分けて書いた伏在神経の記事を、ホームページ版として1本にまとめ直しました。図を加え、文献を確かめ直し、ご自宅で試す順番が分かるように並べ直しています。
膝の画像に写るものが、痛みの原因とは限らない
膝の内側が痛むと、まず半月板や軟骨の傷みが思い浮かびますよね。
もちろん、それが痛みに関わっていることもあります。
ただ、アメリカで50〜90歳の約1,000人の膝をMRIで調べた研究では、半月板の傷みが見つかった人のうち、約6割はこの1か月に膝の痛みやこわばりがありませんでした[1]。
つまり「画像で傷みが見える」ことと「その傷みが今の痛みの原因」であることは、同じではありません。
(この研究は膝の悩みの有無に関係なく集めた中高年の方が対象です。年齢や生活が違う方に、数字がそのまま当てはまるわけではありません。)
だからこそ、画像だけで決めず、「どこを押すと痛いか」「どう動くと痛いか」「感覚に左右差はないか」を一つずつ確かめていくことが大切です。そのとき、見落とされやすい候補の一つが、伏在神経です。
伏在神経ってどんな神経?
伏在神経は、太ももの前を通る大腿神経(だいたいしんけい)から分かれる、皮膚の感覚を受け持つ神経です。
膝の内側から、すねの内側、くるぶしの内側あたりまでの感覚を担当しています。

通り道をたどると、
- 太ももの内側で、筋肉に囲まれたトンネル(内転筋管)を通る
- トンネルを出たあと、膝の内側へ向かう枝(膝蓋下枝:しつがいかし)と、すねの内側へ向かう枝に分かれる
- 膝蓋下枝は、太ももの内側の細長い筋肉「縫工筋(ほうこうきん)」の中を貫いたり、その表面を通ったりして膝の内側の皮膚へ出る
という流れです。
この「筋肉を貫く」「筋肉のあいだを通る」「向きが大きく変わる」場所は、神経がこすれたり、引っぱられたりしやすいところと考えられています。
- ご遺体36肢を調べた日本の報告では、膝蓋下枝が縫工筋を貫いていたのが19肢(52.8%)、縫工筋の表面を通っていたのが15肢(41.7%)でした[2]
- 別のご遺体14側の観察では、14側中12側で縫工筋を貫き、2側で縫工筋の後ろを回っていました[3]
どちらも調べた数が少なく、通り道には個人差があります。「貫いている人は必ず痛くなる」という意味ではありません。通り道の形は「起こりやすさに関わるかもしれない条件」であって、痛みの原因そのものとは区別して考えます。
伏在神経は感覚の神経なので、ここが原因で筋力が落ちることはありません。力が入らない、膝が抜けるといった症状があるときは、ほかの原因を考えて医療機関で調べてもらいましょう。
伏在神経が関わる膝の痛みの特徴
- ピリピリ、チクチク、ジンジンとした痛み
- 軽く触れたり、服がこすれたりするだけで嫌な感じがする(感覚が過敏になっている)
- 逆に、触っても感じにくい部分がある(感覚が鈍くなっている)
- 膝の内側から、すねの内側へ広がる
- 膝の曲げ伸ばし、階段、正座、長く歩いたあとなどに出やすい
- 膝のお皿の上の端から指3〜4本分ほど上、縫工筋と内側広筋(ないそくこうきん:太ももの前の内側の筋肉)のあいだを押すと、膝の内側に響く
これらは鵞足炎(がそくえん)や半月板の痛みと似ているため、区別が難しいことがあります。
縫工筋と内側広筋のあいだに強い押した痛みがあった方を、超音波(エコー)で観察した日本の症例報告があります。2つの筋肉のすべりが悪く、そのあいだで膝蓋下枝が押されている様子が見られ、筋肉のあいだのすべりを良くする理学療法のあと、痛みがなくなったと報告されています[4]。
ただし、これは1人の方の報告です。同じ方法が誰にでも合うとは限りません。
脳と神経から見た「ピリピリ」
痛みは、体からの信号をもとに、脳が「守ったほうがいい」と判断したときに強く感じる感覚です。
神経がこすれたり押されたりする状態が続くと、脊髄や脳の神経回路が敏感になり、ふだんなら痛くない軽い刺激まで痛みとして感じやすくなることがあります(中枢感作:ちゅうすうかんさ)[5]。
「触れるだけで嫌な感じがする」のは、この敏感さが関わっていることがあります。
だからこそ、セルフケアは「強く押す」「がまんして伸ばす」ではなく、脳が安心できる強さで行うのがポイントです。
始める前に:3つのことを確かめる
- 押して痛む場所:膝のお皿の上の端から指3〜4本分ほど上、太ももの内側の「くぼみ」(縫工筋と内側広筋のあいだ)を、指の腹でやさしく押します。膝の内側に響くか、0〜10の数字で痛みの強さを覚えておきます
- 感覚の左右差:ティッシュや指先で、膝の内側からすねの内側を左右同じようになでます。感じ方の違い(強い・弱い・嫌な感じ)を覚えておきます
- 動いたときの痛み:いすからの立ち上がり、階段、しゃがむなど、いつも痛む動きを1つ選び、痛みを0〜10で覚えておきます

セルフケア:やさしい順に
どれも痛みやしびれが強くならない範囲が基本です。ピリピリが強くなったら、すぐに中止してください。
一度に全部ではなく、1つ行ったら、上の3つのどれかで確かめ直しましょう。
1. 太ももの内側の皮膚と筋肉のあいだを、やさしく動かす
- いすに座り、太ももの内側の「くぼみ」(押して響いた場所の周り)に手のひらを当てます
- 皮膚を軽くつまむ、または手のひらで皮膚ごとゆっくり上下・左右にずらします
- 気持ちいい程度の強さで1〜2分
※お風呂上がりなど、温まっているときがおすすめです
※強く押したり、もんだりはしません
2. 縫工筋のストレッチ
縫工筋は、股関節を曲げる・外に開く・外にひねる、膝を曲げる、という働きをもつ筋肉です。
のばすときは、その反対の「股関節を後ろへ伸ばし、内へ寄せ、内にひねる」「膝を伸ばす」方向へ動かします。
- 壁や机に手をついて立ちます
- のばしたい側の脚を後ろへ引き、反対の脚の少し後ろへ交差させます(膝は伸ばしたまま、つま先は少し内向き)
- 骨盤を前へ押し出すように、ゆっくり体重を前へ移します
- 太ももの付け根の前から内側が伸びるところで20〜30秒、2〜3回
※腰を反らさないように、おなかに軽く力を入れます
3. 太ももの前(内側広筋)のストレッチ
- 壁や机に手をついて立ち、のばしたい側の膝を曲げて、足首を手で持ちます
- かかとをお尻に近づけ、膝を体の真下に向けます
- 太ももの前から内側が伸びるところで20〜30秒、2〜3回
※膝に痛みが出る方は、曲げる角度を浅くするか、足首にタオルをかけて行います
4. 太ももの内側(内転筋)のストレッチ
- 床に座り、両足の裏を合わせます(あぐらに近い形)
- 背すじを伸ばしたまま、膝をゆっくり床の方へ近づけます
- 太ももの内側が伸びるところで20〜30秒、2〜3回
※股関節に詰まりや痛みが出る場合は、足をからだから離して行います
5. 神経のすべり運動(やさしく往復)
神経は、体が動くたびに周りの組織の中をすべっています。そのすべりを、引っぱりすぎない範囲でくり返し思い出させる運動です。
- うつ伏せになり、のばしたい側の脚を少し外へ開きます
- 膝を軽く曲げます(足首の力は抜きます)
- 膝をゆっくり伸ばしながら、つま先を床に立てるように足首を反らします
- 2に戻ります。これを小さくゆっくり10回
※「張りを感じる手前」で往復するのがポイントです。5秒止めたり、強く伸ばしたりはしません
※しびれやピリピリが強くなる・あとまで残る場合は中止します
この姿勢は、伏在神経の張りを確かめる検査の姿勢を参考にしています[6]。ただし、伏在神経に特化したすべり運動の効果を確かめた研究は、まだ多くありません。だからこそ、前後で確かめて、あなたに合うかどうかを見ていきます。
6. 感覚を落ち着かせる(やさしく触れる)
触れるだけで嫌な感じがある方向けです。
- 嫌な感じが少ない場所(すねの外側や太ももの外側など)から、柔らかい布やティッシュでなでます
- 慣れてきたら、少しずつ膝の内側へ近づけます
- 嫌な感じが強くならない範囲で1〜2分
※がまんして続けるものではありません。「大丈夫だった」を積み重ねることが目的です
終わったら、もう一度確かめる
最初と同じ3つ(押して痛む場所、感覚の左右差、動いたときの痛み)を確かめてみてください。
結果は「楽になった」「同じ」「悪くなった」「分からない」のどれかで残しておきましょう。
どのセルフケアのあとで変化が大きかったかを見ていくと、あなたの膝で何が関わっているかのヒントになります。

膝の内側は、足首や股関節の影響も受ける
膝は、上の股関節と下の足首にはさまれた関節です。
股関節が内にひねりにくい、足首が硬い、足裏のアーチがつぶれやすいなどの状態があると、歩くたびに膝の内側に負担が集まりやすくなります。
足首と足裏の確かめ方は、こちらのブログで紹介しています。
→ 膝が気になる人へ|足首と足裏を自分で確かめる3つのチェック
どのくらい続ければいい?
まずは1日1回、前後の確認で変化が大きかったものを中心に、1〜2週間続けてみてください。
変化がない、または悪くなる場合は、伏在神経以外の原因が関わっている可能性があります。無理に続けず、ご相談ください。
よくある質問
Q.どれから始めればいい?
まずは「始める前に」の3つを確かめてから、1(皮膚と筋肉のあいだを動かす)と2(縫工筋のストレッチ)から。刺激がやさしく、前後で比べやすいからです。
Q.伏在神経が原因かどうか、自分で分かりますか?
ご自宅の確認だけで、原因を決めることはできません。押して響く場所やピリピリした痛みは、ほかの原因でも起こります。「関わっていそうか」の見当をつけるものと考えてください。
Q.ピリピリが強くなったら?
中止してください。セルフケアのあとにしびれや痛みが残る場合は、強さや回数を減らします。広がる・強くなる場合は医療機関を受診してください。
まとめ
- 画像に写る傷みが、今の痛みの原因とは限らない
- 伏在神経は、膝の内側からすねの内側の感覚を受け持つ神経。太ももの内側で筋肉を貫いたり、筋肉のあいだを通ったりする
- ピリピリ、触れたときの嫌な感じ、太ももの内側のくぼみを押すと響く、が手がかり
- セルフケアは、脳が安心できるやさしい強さで
- 前と後で、押した痛み・感覚・動いたときの痛みを確かめる
当院では、膝の動き、押して痛む場所、感覚、神経の張りを一緒に確かめ、何が関わっているかを見当をつけてから施術します(検査 → 施術 → 再検査)。
→ 膝の痛みについて詳しくはこちら
→ GENRYUメソッドについて
→ ご予約はLINE・お電話(080-7982-0022)で
それではまた、次回のブログでお会いしましょう(*^^*)
参考文献
- Englund M, Guermazi A, Gale D, et al. Incidental meniscal findings on knee MRI in middle-aged and elderly persons. N Engl J Med. 2008;359(11):1108-1115. 文献情報
- 松永和剛, 松崎昭夫, 荒牧保弘. 伏在神経膝蓋下枝の走行について. 整形外科と災害外科. 1997;46(3):838-840. doi:10.5035/nishiseisai.46.838
- 児玉亮, 村瀬政信, 鳥居亮, 浅本憲, 中野隆. 伏在神経の絞扼部位に関する解剖学的検討. 東海北陸理学療法学術大会誌. 2009;25:157. doi:10.11529/thpt.25.0.157.0
- 吉井太希, 赤羽根良和. 縫工筋と内側広筋間における伏在神経膝蓋下枝の絞扼性神経障害が疑われた1症例―超音波診断装置を用いた病態解釈. 理学療法ジャーナル. 2022;56(9):1109-1114. doi:10.11477/mf.1551202803
- Woolf CJ. Central sensitization: implications for the diagnosis and treatment of pain. Pain. 2011;152(3 Suppl):S2-15. PMID: 20961685
- Butler DS. The Sensitive Nervous System. NOI Group; 2000.(伏在神経の検査姿勢:うつ伏せ、股関節を伸ばして外へ開き、膝を伸ばし、足首を反らす)
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