腕が上がらない・耳の横までつかない方へ|肩の動き(挙上・外旋・内旋)を自分で確かめて、ゆるめるセルフケア

腕を上げる3つの段階(上げ始め・90度あたり・最後のひと伸び)と、硬くなりやすい場所

こんにちは、GENRYUです(^^)

この記事の要点

  • 腕が上がりにくいときは、「どの高さで詰まるか」で、硬くなっている場所の見当がつけられます。
  • 上げ始め・90度あたり・最後のひと伸び、の3つの段階ごとに、ご自宅でできるセルフケアを紹介します。
  • セルフケアの前と後で、腕の上がり方を必ず確かめます。変わったものを続けるのが近道です。

先に整形外科を受診してほしいとき

  • 転んだり、重い物を持ったりしたあとから腕が上がらない
  • 夜も痛みで目が覚める、じっとしていても強く痛む
  • 腕や手のしびれ、力の入りにくさがある
  • 発熱がある、肩が赤く腫れて熱をもっている
  • 左肩や腕の痛みと一緒に、胸の痛み・息苦しさ・冷や汗がある(心臓の病気のこともあるので、すぐに受診してください)

「腕を上げると肩が詰まる」「服を着るのが一苦労」「あと少しで耳の横までつかない」。
こんな肩の悩み、ありませんか?

マイベストプロで3回に分けて書いた「肩の動きシリーズ」を、ホームページ版として1本にまとめ直しました。図を加え、どこから試せばいいかが分かるように並べ直しています。

目次

腕はどこまで​上がればいい?

まず、目安になる数字を一つ。
健康な人が日常の動作をするときの腕の角度を調べた研究をまとめた報告では、前から上げる動き(屈曲)も、横から上げる動き(外転)も、約130度あれば多くの動作ができるとされています[1]。

130度は、腕を前からまっすぐ上げて、耳の少し手前くらいの高さです。
真上(180度)まで上がらなくても大丈夫。大切なのは、あなたの生活で困っている動作が楽になることです。

腕が​上がるとき、​肩の​中で​起きていること

腕を上げる動きは、肩の関節だけで行っているわけではありません。

  • 肩の関節(肩甲上腕関節):腕の骨の頭が、受け皿の中で回りながら少しずつすべります
  • 肩甲骨:腕の動きに合わせて、上に回る・後ろに傾く・外に開く
  • 胸の背骨と肋骨:肩甲骨の土台として、反る・広がる

このどれか一つでも動きにくいと、腕は途中で止まりやすくなります。

腕を上げる3つの段階(上げ始め・90度あたり・最後のひと伸び)と、硬くなりやすい場所

どこで​詰まる?​ 3つの​段階で​見当をつける

詰まる高さ硬くなりやすい場所関わる動き
① 上げ始め(前から上げると早めに詰まる)肩の前の上(烏口上腕靭帯・棘上筋の前・肩峰下滑液包)腕を下ろした位置で外にひねる(1stポジション外旋)
② 途中・90度あたり(横から上げると詰まる)肩の前の下(肩甲下筋の下)、胸の前の筋肉(小胸筋)腕を横に上げた位置で外にひねる(2ndポジション外旋)
③ 最後のひと伸び(耳の横までつかない)肩の後ろ(棘下筋・小円筋・関節包の後ろ)、わきの後ろ(大円筋・上腕三頭筋)腕を上げた位置で内にひねる(3rdポジション内旋)

「腕を上げるのに、なぜ”内にひねる”硬さが関わるの?」と思いますよね。
肩の後ろが硬いと、腕の骨の頭が後ろへすべり込めず、前へ押し出されます。その結果、最後のところで前側が詰まりやすくなるのです。

ただし、どこが硬いかは人によって違います。表はあくまで「見当」。最後は、セルフケアの前後で確かめて決めます。

始める​前に:今の​上がり方を​確かめる

  1. 壁に向かって立ち、手のひらを壁につけます
  2. 指先で壁をなぞるように、腕を前からゆっくり上げます
  3. 痛みや詰まりが出る手前の、指先の高さを覚えておきます(付せんを貼るのがおすすめ)

横から上げる動きも同じように、壁の横に立って確かめておきましょう。

壁を使って腕の上がり方を確かめるセルフチェック

セルフケア:段階ごとに

どれも痛気持ちいい程度で20〜30秒キープが基本です。鋭い痛みが出たら、すぐに弱めるか中止してください。

① 上げ始めで​詰まる方

1. 壁を使った1stポジション外旋ストレッチ

  1. 壁の横に立ち、壁側の肘を90度に曲げて脇腹につけます(タオルを挟むと脇が開きにくくなります)
  2. 手のひらを壁に当てます
  3. 肘の位置を動かさずに、体をゆっくり壁と反対方向へひねります
  4. 肩の前の奥が突っ張るところで20〜30秒

2. 腰の後ろに手を回すストレッチ

  1. のばしたい側の手を腰の後ろに回し、手の甲を背中につけます
  2. 反対の手で手首を持ち、体の中心の方へ、背中から少し離す方向へゆっくり引きます
  3. 肩の前の上に伸び感が出るところで20〜30秒

    ※体がねじれないよう、正面を向いたまま行います

② 90度あたりで​詰まる方

ここは順番が大切です。先に土台(胸と肩甲骨)をゆるめ、そのあとで肩の関節をのばします。

3. 壁を使った小胸筋ストレッチ(土台をゆるめる)

  1. 壁の角や柱の横に立ち、前腕を壁につけます。肘は肩より高く(120〜130度くらい)
  2. 前腕を支えにして、ゆっくり体を前へ進め、胸を開きます
  3. 肩甲骨を背骨に寄せるのではなく、「肩甲骨の下の角を肋骨に押しつけ、肩甲骨全体を後ろに傾ける」イメージで
  4. 鎖骨の外下あたりから胸の奥が伸びるところで20〜30秒

    ※腰を反らしたり、首を前に出したりしないように

4. 胸を開く床みがき運動(土台を動かす)

  1. ストレッチポール(またはバスタオルを丸めたもの)に、背骨に沿って仰向けに乗ります。膝は立てます
  2. 両手を天井に向けて伸ばし、手の甲で床をこするように、ゆっくり大きく頭の方へ動かします
  3. 痛みのない範囲で、深呼吸しながら5〜10回

5. 壁を使った2ndポジション外旋ストレッチ(肩の関節をのばす)

  1. 壁の横に立ち、腕を横に上げて肘を90度に曲げます(ガッツポーズの形)
  2. 前腕と手のひらを壁につけます
  3. 腕は動かさず、体だけをゆっくり壁と反対方向へひねります
  4. 肩の前の奥が伸びるところで20〜30秒

    ※肩がすくむ、肩甲骨が前に出る、腰が反る、のどれかが起きたら弱めます

③ 最後のひと伸びが​足りない方

6. 肩甲骨を固定したクロスボディストレッチ

  1. 壁の角に、わきの後ろあたり(肩甲骨の外側のふち)を当てて、肩甲骨が動かないようにします
  2. のばしたい腕を肩の高さで胸の前に出し、反対の手で肘を持って胸の方へ引き寄せます
  3. 肩の後ろが伸びるところで30秒

肩の後ろが硬い人を対象にした研究では、クロスボディストレッチを1日1回・30秒×5回・4週間続けると、腕を内側にひねる範囲が平均で約20度広がりました。何もしなかったグループは約6度でした[2]。

7. やさしいスリーパーストレッチ

  1. のばしたい側を下にして横向きに寝ます
  2. 下の腕を肩の高さより少し低め(70〜80度)に前へ出し、肘を90度に曲げます
  3. 反対の手で手首を持ち、手のひらが床に近づく方向へゆっくり倒します
  4. 肩の後ろが伸びるところで20〜30秒

    ※肩の前や上に鋭い痛みが出たら、腕の高さを下げるか中止します

同じ研究では、スリーパーストレッチでも範囲は広がりましたが(平均約12度)、何もしなかったグループとの差ははっきりしませんでした[2]。まずは6を中心に、7は痛みが出ない方だけ追加しましょう。

8. わきの後ろ(大円筋・上腕三頭筋)のストレッチ

  1. 机や台の前に立ち、両手を台に置きます
  2. 腕を伸ばしたまま、お尻を後ろに引いて、上半身を床と平行に近づけます
  3. わきの後ろが伸びるところで30秒
  4. 余裕があれば、肘を曲げて手を後頭部の方へ近づけると、二の腕の裏も伸びます

仕上げ:腕を​上げる力をつける

9. フルカン・エクササイズ

  1. 両手に軽いペットボトルを持ち、親指を天井に向けます
  2. 腕を真横より少し前(斜め前30〜45度)の方向へ、肩がすくまないようにゆっくり上げ下ろしします
  3. 痛みなく上がるところまで、10回×2セット

この角度は、肩の関節の中で骨が受け皿に収まりやすい、安全な通り道です。

終わったら、​もう​一度確かめる

最初と同じように、壁で腕を上げてみてください。指先の高さは変わりましたか?

結果は「上がった(楽になった)」「同じ」「悪くなった」「分からない」のどれかで残しておきましょう。
どのセルフケアのあとで変化が大きかったかを見ていくと、あなたの肩でどこが硬くなっているかのヒントになります。

確かめる、ひとつ変える、確かめ直すの流れと、結果の残し方

脳と​神経から​見た、​肩の​セルフケア

体は、脳が「この範囲なら安全」と判断したところまで動くことを許しています。
痛みや詰まりをがまんして無理にのばすと、脳は「危ない」と判断して、かえって周りの筋肉を固めてしまうことがあります。

だからこそ、

  • 痛気持ちいい範囲で、ゆっくり
  • 呼吸を止めずに
  • 前後で確かめて、「動けた」という経験を積み重ねる

ことが大切です。「動けた」をくり返すことで、脳の中の「この動きは安全」という地図が少しずつ書き換わっていく、というのが当院の考え方です。

どのくらい​続ければいい?

研究では、1日1回、30秒×5回を4週間続けていました[2]。
まずは、前後の確認で変化が大きかったものを中心に、1日1回から始めてみてください。

五十肩(凍結肩)の診療ガイドラインでは、痛みが強い時期は弱く短いストレッチを、痛みが落ち着いてきたら少しずつ強く長いストレッチを、と段階に合わせた進め方がすすめられています[3]。痛みが強い時期に無理にのばすと、かえって長引くことがあります。

よくある​質問

Q.どれから始めればいい?
まずは「どの高さで詰まるか」を確かめて、その段階のものから。迷ったら、6のクロスボディストレッチと8のわきの後ろのストレッチがおすすめです。安全に行いやすく、前後で比べやすいからです。

Q.痛みが出たらどうする?
鋭い痛みが出たら中止してください。ストレッチのあとに痛みが強く残る場合は、強さや時間を減らしましょう。

Q.真上まで上がらないといけない?
いいえ。日常の多くの動作は、約130度あればできるとされています[1]。

まとめ

  • 日常生活で必要な腕の角度は、約130度が目安
  • 「上げ始め」「90度あたり」「最後のひと伸び」のどこで詰まるかで、硬い場所の見当をつける
  • 90度あたりで詰まる方は、胸と肩甲骨(土台)を先にゆるめてから肩をのばす
  • セルフケアの前と後で、必ず腕の上がり方を確かめる
  • 痛みが強い時期は、弱く短く

セルフケアを続けても詰まりが変わらない方は、肩の関節だけでなく、肩甲骨や背中、首から腕への神経の動きが関わっていることがあります。

当院では、腕を上げる動きを一緒に検査し、どこが関わっているかを確かめてから施術します(検査 → 施術 → 再検査)。
→ 肩の痛みについて詳しくはこちら
→ GENRYUメソッドについて
→ ご予約はLINE・お電話(080-7982-0022)で

それではまた、次回のブログでお会いしましょう(*^^*)

参考文献

  1. Oosterwijk AM, et al. Shoulder and elbow range of motion for the performance of activities of daily living: A systematic review. Physiother Theory Pract. 2018;34(7):505-528. PMID: 29377745
  2. McClure P, et al. A randomized controlled comparison of stretching procedures for posterior shoulder tightness. J Orthop Sports Phys Ther. 2007;37(3):108-114. PMID: 17416125
  3. Kelley MJ, et al. Shoulder pain and mobility deficits: adhesive capsulitis. J Orthop Sports Phys Ther. 2013;43(5):A1-A31. PMID: 23636125
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この記事を書いた人

理学療法士。病院・整形外科クリニックで9年間リハビリに携わったのち、2016年に大分市金池町で「綜合整体 GENRYU」を開業。脳科学を基にしたトレーニング法「Z-Health」で痛みの神経科学・運動学習を学び、研究にもとづく検査と施術、セルフケアの指導を行っている。

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